前回は川崎競馬だったが今日は大井競馬のファンファーレについてである。
私にとって大井競馬のファンファーレといえば,旧旧ファンファーレと旧ファンファーレだ。旧旧ファンファーレは2003年まで使われた。2003年にLWingができるまでの大井は私にとって魔境だった。
多くのロスジェネ世代がそうであったように,私の競馬知識はゲーム,競馬ブック,ギャロップ(ファンファーレ(競馬報知)はすぐになくなってしまった),別冊宝島で補完されていた。なかでも種牡馬については成沢大輔の「ダービースタリオン全書」の種牡馬コーナーがほぼすべての情報源だった。「スリルショー=早熟・平坦・スピード」だとか「モガミ=気性難」なんてのは,レースを見てそう分類していたわけでなく,「ダービースタリオン全書」の種牡馬コーナーがそう言っていたからそう分類されていたのだ。
のちにサラブレの「金満血統王国」を読むようになったり,その延長線上で自由国民社の「パーフェクト種牡馬辞典」を買うようになるのだが,当時「金満血統王国」はまだこの世に存在していなかったし,「パーフェクト種牡馬辞典」は今みたいにファニーなよしだみほ表紙でなく高級な「絵画」だった。紙質もそれはそれは上質で,貧乏学生が手にしちゃいけない雰囲気を漂わせていた。なにより値段が高かった。
そんなにわか競馬ファンにとって,当時の地方競馬で走っている馬はよくわからなかった。なぜなら,「ダービースタリオン全書」の種牡馬コーナーの載っていない種牡馬の産駒ばかりだったからだ。
アングロアラブの血統は本当にまったくわからなかったし,サラブレッド系のレースでもとにかく種牡馬がわからない。輸入種牡馬はどこの馬の骨とも想像しがたいただのカタカナにしか見えなかったし,内国産種牡馬にも,ダビスタ全書に載っていないどころか別冊宝島でいじられるような過去の大レースの出走表に載っていないような馬がたくさんいたのだ。「父ドウカンヤシマ」でもほっとするレベル,と言ったら伝わるだろうか。
そんな感じだったので,大井に行くのはもっぱら大レースの日だった。何度も言うが,コンサートボーイヒカリルーファスジョージタイセイ,鷹見浩のツキフクオー,キレッキレパルブライト,上がり馬イナリコンコルド,いつの間にか大井にいた条件戦番長ベニノコバンなどは,私の青春そのものだ。
そんな日に大井で演奏していたのが旧ファンファーレ隊である。
大井の旧ファンファーレおよび旧旧ファンファーレはトロンボーン奏者岩崎敏信さんの作曲だ。岩崎さんのファンファーレはどれも超絶すばらしい。まさに「筆舌に尽くしがたい」とはその通りで,どれもこれもすばらしく1曲1曲魅力を語っているとクッソ長文になってしまうので,今日は旧旧G1ファンファーレ「神聖なる優者達へ」について話そうと思う。まずはこの曲をお聴きいただきたい。
▼旧旧G1ファンファーレ「神聖なる優者達へ」
変ロ長調のこの曲,主旋律はめちゃくちゃシンプルである。C(ド)を7拍伸ばし,その音を8分音符2つ鳴らしてD♭に1度上がる。でD♭を7拍伸ばし,その音を8分音符2つ鳴らしてE♭に2度上がる。E♭を3拍伸ばし,その音を4分音符1つ鳴らしてEに1度上がる。Eを3拍伸ばし,その音を4分音符1つ鳴らしてG♭に2度上がる。G♭を3拍伸ばしたあと,G,A♭,Aと3連符で駆け上がり最後はB♭のロングトーン。詳しくない方のために簡単に言うと「1音ずつ高くなっていくだけ。でも段々急いで駆け上がるさまが描かれている」のだ。しかも,変ロ長調の主音(B♭)は道中鳴らない。道中主役はまだ不明である。そして階段状に駆け上がった最後の最後,小刻みに駆け上がった最後に「主役」が登場。ちょうどゴール板を過ぎたあと勝ち馬がウイニングランするかのような主音B♭が鳴り響くのだ。
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「少しずつ上がる。少しずつ急ぐ。最後の最後まで主役が誰かわからない」。
ただ1音ずつ上がっていくだけの曲でこれだけ競馬のG1レースを描写できるなんて,天才の所業としか思えない。
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もう1曲,岩崎さんのファンファーレがいかにすごいかを伝えたく旧一般ファンファーレ「勝利への序幕」を取り上げたいが長くなりすぎるのでそれは次回に。